要点
- 米国債利回りは財務省の買い戻し拡大措置後も上昇傾向にあり、30年物利回りは5.25%前後で推移している。
- ビッグテック5社によるAI設備投資は年間7500億ドル規模に達し、資金調達のための社債発行が急増している。
- 米国債とビッグテック社債が投資資金を奪い合う構造が、市場全体の金利上昇圧力となっている。
財務省の介入でも止まらない米国債利回りの上昇
米財務省が長期国債の買い戻し拡大を発表した直後、30年物国債利回りは一時5.18%まで低下したものの、その後再び上昇に転じ、直近では5.25%前後で取引されています。 これは先週記録した19年ぶりの高水準である5.3371%に迫る水準です。
この背景には、メタ、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、オラクルの5大AIハイパースケーラーによる莫大な設備投資があります。
S&Pグローバルレーティングスによると、これらの企業の年間設備投資額は7500億ドルに達し、資金調達のための社債発行額は、今年10日までの時点で前年同期比18倍近い2200億ドルに急増しています。
AI投資競争が招く「資金の奪い合い」と金利上昇の構造
米国債とビッグテック社債が、限られた投資資金をめぐって直接的な競争関係にあることが債券市場の需給を悪化させています。
投資家は、米国政府への貸付による5%台の利回りと、信用力の高いビッグテック社債による6%台の利回りを比較選択できる状況にあります。 この結果、ビッグテック側は投資家を惹きつけるために、米国債よりも高い利回りを提示せざるを得ません。
AI構築の加速に伴い資本の希少性が高まる中、企業が市場で資金を求め続ける限り、新規発行時の利回りは上昇し、米国債との金利差も拡大する構造が定着しています。
市場の消化能力を圧迫するAI関連債券の供給過多
現在の市場は、財政赤字や物価不安といった構造的な金利上昇要因に加え、AI投資という新たな需要が加わったことで、金利低下を阻む強い圧力がかかっています。
財務省の買い戻し措置による安定化効果は限定的であり、ビッグテックによる社債発行が継続する限り、市場の消化能力を超えた供給過多が利回りを押し上げる状態が続いています。
投資家がより高い利回りを求める動きは、米国債市場の需給バランスを維持する上で大きな障壁となっており、金利上昇圧力が容易に緩和されない状況が示されています。
ゴールドマン・サックスが予想する年間発行額(来年4000億ドル)に対し、実際の調達ペースが上回るか下回るかによって、市場の需給逼迫度と利回り上昇圧力が変化する。
現在平均0.89%であるAI関連社債と米国債の金利差がさらに拡大するかを確認することで、投資家のリスク許容度と市場の消化不良の深刻さを判断できる。