鳶工事業の倒産、1〜8月110件で16年ぶり100件超—人手不足と物価高、小規模業者に重い負担
30秒まとめ
東京商工リサーチによると、2026年1〜8月の鳶工事業の倒産は110件で前年同期比26.4%増となり、同期間として16年ぶりに100件を超えました。倒産企業の89.0%が資本金1,000万円未満、91.8%が従業員10人未満で、小規模事業者への負担が目立ちます。人手不足倒産は19件、物価高倒産は9件に増えており、受注の多さだけでなく採用力や価格転嫁力の差が経営を分けています。
倒産110件、年間最多を上回るペース
東京商工リサーチが負債1,000万円以上の鳶工事業の倒産を集計したところ、2026年1〜8月は110件でした。前年同期比では26.4%増で、2010年同期以来16年ぶりに100件を超えています。年間最多は2010年の148件ですが、今回の調査では現在のペースが続けば2026年は170件も視野に入るとされています。ここで重要なのは「建設需要がある=鳶工事業者の経営が一様に良い」とは限らない点です。
小規模事業者に倒産が集中
110件のうち資本金1,000万円未満は98件で89.0%、従業員10人未満は101件で91.8%でした。原因別では売上不振が78件、赤字累積が24件で、業績不振に分類される倒産が92.7%を占めています。大都市圏でも大阪11件、愛知9件、神奈川・千葉・宮城が各8件と発生しており、地域を限定した問題ではありません。
人手不足と物価高が同時に効いている
特別原因では「人手不足」倒産が19件と前年同期の10件からほぼ倍増し、「物価高」倒産も9件と前年同期3件から3倍になりました。厚生労働省の7月の有効求人倍率は全業種1.18倍に対し、鳶職人を含む建設躯体工事従事者は7.94倍とされています。人を確保するための賃上げと、資材・外注費などのコスト上昇が同時に進むと、見積価格へ十分転嫁できない事業者ほど利益が薄くなりやすい構図です。
業界全体の増収と小規模赤字は両立する
5期連続で比較できる1万5,941社では、2025年度の売上高合計は3兆2,165億円で前期比4.5%増、純利益は1,045億円で24.4%増でした。一方、完工高1億円未満の事業者では赤字企業が37.5%に達し、完工高10億〜50億円の事業者の赤字率7.0%との差が大きくなっています。ニュースを見る際は業界全体の売上だけで判断せず、企業規模、採用状況、価格交渉力まで分けて確認する必要があります。
発注側・取引先が確認したいポイント
鳶工事は足場や鉄骨など建設工程の前後に関わるため、業者の資金繰り悪化や人員不足は工期にも影響し得ます。ただし今回の数字だけで特定地域や個別工事の遅延を予測することはできません。発注側や元請けは、協力会社の人員配置、見積単価の改定、支払条件、代替業者の確保など、実際の契約条件を個別に確認するのが現実的です。
📌 チェックポイント
- 1〜8月の倒産は110件、前年同期比26.4%増
- 資本金1,000万円未満が89.0%、従業員10人未満が91.8%
- 人手不足倒産19件、物価高倒産9件
- 完工高1億円未満では赤字企業37.5%